Ⅰ、初めての……

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……不思議だ。 これだけの事をしでかしたというのに まだ小学生であるはずの僕の心は座禅中の僧侶のように 落ち着き払っている。 前々からそうじゃないかと思っていたのだが きっと僕の裡には良心というモノが 存在していないのだろう。 だが、それが何だと云うのだ。 植物のように変化のない毎日を淡々と過ごす事に そんなモノは無用でしかない。 読書する振りをしながら 机の下でペンケース入れに詰め込んだ 大量の小銭を用意した数個の小銭入れに移し変えながら 僕は思案し続ける。 例えるのなら 僕にとっての人生の喜びとは 起伏の無い平坦で真っ直ぐな道を ただひたすら歩く事、 歩くという行為そのものなのだ。 そこには景色も目的地も必要ない。 歩けさえすればそれでいい。 路傍の雑草や石ころですら無駄だ。 頼むから黙って歩かせてほしい。 他には何も望まない。 だがもしもその歩みのペースを乱したり 道に手を加えようとする者がいたら (たとえそれがどんな理由であったとしても) 僕は全力で排除するだろう……
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