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……不思議だ。
これだけの事をしでかしたというのに
まだ小学生であるはずの僕の心は座禅中の僧侶のように
落ち着き払っている。
前々からそうじゃないかと思っていたのだが
きっと僕の裡には良心というモノが
存在していないのだろう。
だが、それが何だと云うのだ。
植物のように変化のない毎日を淡々と過ごす事に
そんなモノは無用でしかない。
読書する振りをしながら
机の下でペンケース入れに詰め込んだ
大量の小銭を用意した数個の小銭入れに移し変えながら
僕は思案し続ける。
例えるのなら
僕にとっての人生の喜びとは
起伏の無い平坦で真っ直ぐな道を
ただひたすら歩く事、
歩くという行為そのものなのだ。
そこには景色も目的地も必要ない。
歩けさえすればそれでいい。
路傍の雑草や石ころですら無駄だ。
頼むから黙って歩かせてほしい。
他には何も望まない。
だがもしもその歩みのペースを乱したり
道に手を加えようとする者がいたら
(たとえそれがどんな理由であったとしても)
僕は全力で排除するだろう……
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