6人が本棚に入れています
本棚に追加
/86ページ
僕の住んでいる町とは違い
この辺りは住宅街とは云ってもまだ宅地造成中で
灯りの灯っている家は疎らにしかない。
もしも街灯がなかったなら
ほとんど暗闇に近い状態で
おそらく一歩も歩けたりはしないだろう。
時々会社帰りのOLや塾(或いは部活)帰りの女子生徒が
痴漢(この世で最も愚かな部類の人種)に遭ったという話を
聞いていたりもする。
こういう時ばかりは
男に産まれてきて良かったと
ほんの少しだけだか
心の片隅で思わないワケでもない。
(まぁ最近はそうとばかりは言えないような時代ではあるが……)
猫の鳴き声一つも聞こえない静かな道程を
十分ほど歩いてきたその時、
突然後方から静寂を突き破る(というか破壊する)爆音が轟いてきた。
街灯の薄い灯りの中に現れた深紅のソイツは
咄嗟に道の端へと逃れた僕を尻目に
耳障りなデスメタル系の狂声をがなりたてながら
ピンボールのように不規則な動きで
駈け去っていった。
最初のコメントを投稿しよう!