Ⅱ、路傍の石

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僕の住んでいる町とは違い この辺りは住宅街とは云ってもまだ宅地造成中で 灯りの灯っている家は疎らにしかない。 もしも街灯がなかったなら ほとんど暗闇に近い状態で おそらく一歩も歩けたりはしないだろう。 時々会社帰りのOLや塾(或いは部活)帰りの女子生徒が 痴漢(この世で最も愚かな部類の人種)に遭ったという話を 聞いていたりもする。 こういう時ばかりは 男に産まれてきて良かったと ほんの少しだけだか 心の片隅で思わないワケでもない。 (まぁ最近はそうとばかりは言えないような時代ではあるが……) 猫の鳴き声一つも聞こえない静かな道程を 十分ほど歩いてきたその時、 突然後方から静寂を突き破る(というか破壊する)爆音が轟いてきた。 街灯の薄い灯りの中に現れた深紅のソイツは 咄嗟に道の端へと逃れた僕を尻目に 耳障りなデスメタル系の狂声をがなりたてながら ピンボールのように不規則な動きで 駈け去っていった。
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