Ⅱ、路傍の石

5/13
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/86ページ
(危なかった……) 走り去るフェラーリ(車には全く興味がないので、詳しい車種までは解らない)の後ろ姿を 僕は冷たい視線で見送った。 (あれが噂に聞くバカ大学生か……) 実際に会った事はないのだが この界隈にある高級マンションに かなり評判の悪い学生が住んでいるらしい。 ろくに大学にも行かず 親の金で毎日遊び呆けていて 近隣の住民がかなり迷惑しているらしいという話を 同じ塾の友人(そう思っているのは相手の方だけだが)から よく聞かされていた。 自由と無法の区別もつかない 生ゴミほどの価値もない愚物だ。 (生ゴミの方が肥料に使える分、まだ利用価値がある) 植物のように、目立たず淡々と毎日を送りたい僕とは 丁度対極にいるような存在で できるなら一生関わりあいたくない。 さっきのニアミスは 忘れてしまう方が懸命だろう。 僕は何事もなかったように 再び家路への歩みに戻った。
/86ページ

最初のコメントを投稿しよう!