6人が本棚に入れています
本棚に追加
僕は未だ倒れ伏したままの老女を
まるで不燃物を見るような感情の籠らない冷たい眼で見ながら
その後頭部の髪の毛を掴んだ。
そのまま膝の高さまで頭を持ち上げる。
老女の口が微かに動く。
誰かに助けでも求めているのだろうか?
その姿は水槽から出されて窒息寸前の金魚のようにも思える。
僕は息を止めると
掴んだままの頭を
全体重を掛けてアスファルトに叩きつけた。
『グシャッ』という小玉西瓜を押し潰したような感触。
歳を経てウエハースのように脆くなっていた頭蓋骨は
簡単に砕けてしまったようだ。
(……これでよし)
横たわる老女の身体は
もうピクリとも動かない。
頭の下から歪な放射状に
黒いシミが拡がってきた。
僕は大きく息を吐き出すと
死体には眼もくれず
再び人影一つ見当たらない帰路を歩き出した。
最初のコメントを投稿しよう!