Ⅰ、初めての……

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「あ……朝の事なんだけどさ、 実は……」 「おぉそうそう、 オマエ、あんなに足速かったンだよな。 そのコトで話あンだよ」 何とか口止めしようとする僕を無視して Aは勝手に話を進め始めた。 「体育祭のクラス対抗リレー、アンカー俺だったンだけどオマエやれよ。 俺は第一走者やるからよ」 …………!? なんだって!? コイツはナニ馬鹿なコトを言ってるンだ!? 一ヶ月後の体育祭。 (蛇足だが僕はこのテのイベントが大嫌いだ。 日常をつつがなく送るのに 全く必要のない無駄な行いだ) そのオーラスに行われるクラス対抗リレー。 出場するだけでも注目を浴びるというのに アンカーなど正気の沙汰とは思えない。 「いいだろ? オマエのあの足なら 優勝間違いナシだぜ。 普段、居るか居ないか分からないンだから、 こういう時に目立たないとな」 ウルサイ!!!!! 何のために僕が 細心の注意と努力で 目立たないようにしてきたと思っているんだ!? アンカーなんかやったら 勝っても負けても 待っているのは(僕にとっての)地獄だ。 「そういうコトだからヨ。 皆には明後日のロングホームルームで俺から伝えておくから ヨロシクな」 自分の言いたい事だけを伝えると Aはさっさと校庭の方へと 駆け去ってしまった。
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