第一章 傭兵二人 

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   ドライア大陸、グラススケイル平原北部。  ギルド・タウンから出て、そのまま西に進んで行くと景色が一転する。  雪は徐々に少なくなり、気温も上がってくると、そこは既にグラススケイルと呼ばれる平原だ。  様々な草花が群生し、高所から見下ろすとそれらがウロコのように見えることからその名が付いた。  そのグラススケイルを、リリィは馬に乗りながら移動している。  一応、魔力を動力源とする魔動バイクや魔動車と言う乗り物も在るのだが、街の出入り口にいるレンタル・ギルドのマスターによれば、皆出払っているから馬しか貸せない。とのことだ。  実はリリィ、意外と機械好きで、魔動バイクで颯爽と平原を駆け抜けることを楽しみにしていた。  それができずに初っ端から少し気分が落ちてしまったが、いつか自分の魔動バイクを買うことを胸に誓い、馬を借りて今に至る。  気を取り直したリリィが目指すは、目的地の帝国基地。  その彼女の背には大きな革製のリュックがある。  中に入っているのは、当然、依頼の内容にそって購入した医療品だ。 (天気も見晴らしもいいけど、油断は禁物ね……)  初仕事で失敗はしまいと、リリィは周囲を警戒しながら馬を走らせる。  そうしていると、あちこちに色々なモノが打ち捨てられていることに気付く。  折れた剣や槍、破れた戦旗にボロボロの盾。兜や鎧などもあった。  戦争が始まってからこの方、グラススケイルは開けた平野が少ないドライア大陸において、貴重な野戦場となっているのだ。 (ここで大勢の人々が戦い、生き残り、死んでいったのね……)  戦いの残滓は、リリィの胸に感傷を刻む。それと同時に、覚悟も。  ――いずれは自分も、ここで戦うのだろう。  当然だが、傭兵は野戦にも駆り出される事がある。  そうなれば、見知った傭兵仲間とも戦うことになるのだが、リリィにはそれよりも重要なことがあった。
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