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「いつも言うけど、お茶くらい出したらどう?」
「てめーにやる茶なぞねぇよ!」
と、お決まりの会話を交わし、お互い向かい合って座る。
両者共に上からの態度を崩さず、数十秒が経過し……、
「……で、仕事の内容ってのは?」
先に折れたのはランスロットの方だった。
下手に出っぱなしなのが釈然としないが、このまま沈黙していても意味がない。
彼にとって仕事(金)の話は、プライドよりも優先すべき事項なのだ。
「よろしい。なら、心して聞きなさい」
これまたスティアのお決まりのセリフだ。
どういうわけか、彼女がこれを言うと、どんな荒くれ者の傭兵でも聞く体制に入る。
それは、ランスロットも例外ではない。
それはおそらく、スティアのカリスマ性なのだろう。
彼女の持ってきた仕事の内容はこうだ。
依頼主は、ドライア大陸北西に基地を持つ帝国。
内容は、近々、グラススケイル平原にて行われる野戦に備え、現地、または周辺森林地帯から現れる魔物の掃討。
要するに露払いだ。いかにも傭兵らしい仕事である。
「アンタが気になる契約金は、五万イェンよ」
「安い。ほか当たれ」
スティアの金額提示に対し、ランスロットは即答した。
ちなみにだが、この世界、しかも、未開地のドライアにおいて、五万イェンとは結構な高額である。
ちょっと家柄がいい騎士が、頭からつま先まで武装して、若干おつりがくる。
だが、ランスロットはそれを蹴った。しかも即答で。
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