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そして、リリィの傍らには、彼女の武器である槍剣(スピア・ソード)が立て掛けてある。当然刃は鞘に収まっているが。
槍剣は、早い話が柄の長い両刃剣だ。
刺突よりも斬撃に優れ、長柄のリーチと遠心力により、女性だろうと高い威力を発揮できる。
更に、リリィには魔術の心得がある。
十歳の頃からその素質が現れ始め、それに気付いた彼女の義母が、スティアと共に徹底的に教え込んだ。
結果、スティアは魔術のエキスパートになり、リリィもそれに負けず劣らずの実力を持った。
武器の扱いは義父より仕込まれ、十六で、修行はほぼ完了。
まだ実戦経験は無いものの、実力は十分持ち合わせている。
「いいのよ。アナタには目的があるんだから。
でも、辛いときはいつでも義姉さんに相談してね?」
リリィの謝罪に、スティアはそう応えた。
大事な大事な義妹を心配するその様は、シスコンそのもの。
ランスロットが今のスティアの姿をみれば、間違いなく絶句硬直確定だろう。
「ありがとう義姉さん。
ねぇ、早速お仕事がしたいんだけど、何かある?」
リリィは、大好きな義姉の心遣いに感謝しつつ、仕事の話を持ちかけた。
彼女の顔に、期待に溢れた笑みが浮かぶ。
「いいやる気ね。今だったら、そうね……。
帝国側から薬品の補充依頼が来てるわ。早急に必要みたいで、昨日帝国兵がお代とメモを置いていったわ」
「つまり、そのお金で、メモの薬品を買えるだけ買って、帝国側の基地に持って行けばいいのね?」
「そう言うこと。さすがリリィね。物分かりが早くて助かるわ。行ってくれる?」
「ええ! 初仕事、きちんと達成してくるわ」
とんとん拍子で話が決まり、リリィはスティアからお代の入った金貨袋と帝国兵のメモを受け取った。
「道中には魔物も出てくるはずよ。気をつけてね」
「うん。ありがとう義姉さん。それじゃあ、行ってきます」
スティアの心配をありがたく受け止め、リリィはギルドを後にした。
彼女の傭兵人生は、今始まったのであった。
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