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意外な言葉に思わず眉をしかめる。
隣にいる妾候補はプイとそっぽを向いて何も言わない。
なんとはなしにその仕草に興を削がれ、また原因を作った正妻にも非難がましく言葉を紡ぐ。
「繭月よ…そんなことを言ってしまったら興醒めしてしまうとは思わないのか?」
「これはしたり……私は夫である公主のことを考えて発言しただけでございます」
悪びれず、意外そうに答える繭月の答えを聞き、閉口してしまう。
「今日は疲れた……伽はよい」
公主と呼ばれた男はそれだけ言うと自室へと戻っていってしまった。
後に残されて恨みがましく見つめる妾候補を涼しく受け流し、ニコリと笑う。
まるで悪意などないかのように。
やがて居心地が悪かったのか妾候補は鼻を鳴らして廊下を進んでいってしまった。
今は対立するのは得策ではないという事を女と権力のある家で育まれた本能で察知したのだ。
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