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冷め切った関係ですもの、つけいる隙はやがて訪れるはずというほくそ笑みを隠さずに……。
晩夏とは言えまだ外は暑い。
たとえ夜中であってもだ……。
「……それで気掛かりは終わったのか?」
パタパタと水鳥の羽で作った扇で扇ぎながら、鬱陶しそうに答える。
華美な装飾の施された部屋の対角線上には、繭月が寝間着用の衣装に包まれて正座している。
「はい……ああ、それともう一つありました」
ニコリと笑ってその後は続けない。
公主が発言を許可するのを待っているのだ。
嫌な女だ。 あくまで自分は仕えているという態度を崩さない。
そしてこちらからの答えを待っているということは公の話ではなく私的なことであろう。
他の臣のように仕えていながら私的なことを指摘出来るこの間柄はなんとも奇妙なものだな。
心中深くでつぶやく。
「よい……話してみよ」
「はい、それでは……妾を囲うのは構いませぬが、子を作るのは暫く自重なされますよう」
「何故だ?」
昼間に邪魔されたことを根に持ちながらも、疑問を投げかける。
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