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事実、当代では繭月の殺された両親や一族の者達は讒言によって無残な死を遂げた忠臣となっている。
(実務や国の要職を兼任するようになれば自然とそうなる)
「……そうなればよいな」
公主である彼とて十年どころか来年生きている保証はないし、生きていたとしても公位を奪われて幽閉されているかもしれない。
「はい……なのでそのための努力も犠牲も惜しみませんので」
「ふん、お前のような姦物を伴侶にしなければとはな……」
「……でも頼もしいでしょう?」
返事はしなかった。 ただそっと頭を撫でてやる。
国という大きな機巧の中では彼も彼女も部品の一つにしか過ぎない。
円滑に回らなければ代替え可能な存在。
そして替えられた者の末路は憐れだ。
歴史が証明してくれている。
歴代の公主の中で狂人が稀に出るのもわかる。
並ぶ者の居ない天上の代行者として育てられ、運悪く『部品』ということに気づいてしまい、その差に自尊心を傷つけられ、狭苦しい
公宮に心を潰される。
だが彼ははそうならなかった。
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