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傍らにいる賢妻のおかげだ。
おそらく繭月も同じであろう。
彼と繭月は互いに互いを疎ましく思いながらも、己が『部品』だということを認識し、交換されないことを願っている。
皮肉なことにこの女と俺は機巧の一部としてはこれ以上無いほどに噛み合っている。
「まったく嫌な女だお前は……」
意味を正確に捉え、女っぽくクスリと笑う。
「皮肉ですか……でもそれが女の私が生きる道ですから」
その言葉だけは優しかった。
それを合図に目を瞑り、繭月を引き寄せる。
「どうか忘れないでくださいね……私の生きる道が有為様が最も幸福に生きる道でもあるのですよ」
『部品としての名前』ではない夫の名を呼び、繭月が慣れたように頬に細い指を添える。
「やはりお前は嫌な女だ」
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