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濡れた目に赤く染めた頬。加えて乱れた呼吸音に店主は薄く笑む。視線はまるで肉食獣だ。しかし息を整えることに余念がないトシは熱っぽい目配せに気付きもしない。 「……ねぇ、今夜オネェさんと遊ばない?」 「ちょ、トキワそれはガチでだめだ。やめろ。いたいけな青年に手を出す気か!」 「えと、どこに遊びに行きますか」  潤んだままの瞳で見上げ、小首を傾げて尋ねるトシの姿に思わずタオが噴き出した。トキワと呼ばれた人物は動きを一瞬止めた。 「そうね……大の男が二人寝そべっても大丈夫で多少の運動にも耐えられる場所がいいわね」 「あ、柔道されてるんですか? すいません、僕、そっちは疎くて。剣術ならお相手できますよ」  閃いたとでもいうように破願して手を打つトシの頭を、タオはため息を漏らしながら打った。 「バカだろ。やることは一つに決まってるだろ。コイツを見て考えて答えろよ」 「では、組体操ですか?」 「バカ。お前とこいつ、大の大人が二人だけで組体操している姿を想像してみろ。倒立か? 肩車か? サボテン? どれをやったとしてもシュールすぎるだろうが。むしろ見たくないわ! せめて人数を…って違う。こんなこと言ったらトキワが調子に乗る」 「トシちゃんったらぁ。ホントいまどき珍しい純情ボーイね。オネェさん、より一層たぎってきちゃったわ。そうそう、タオが希望するなら三人でやってもいいわよ? 私が手取り腰取り色々教えてあげる」  トキワがぱちんとウインクしながら嬉々として誘う。が、しかしトシは最後まで彼女の言葉を聞くことはかなわなかった。タオが蒼白な顔色でトシの耳をふさいだのだ。 「やめろ。見たくないし、したくもない。おっさん攻めなんてそれこそないだろう」 「こんなかわいい子を目の前にしてしたくないなんて、タオったら不能なんじゃないの? それにおっさんなんていわないでよ。せめてお兄さん、ね。」 「おっさんはおっさんだろ」  言い争う二人をしり目にトシはタオからもらった酒をちびちびと飲み進めていた。
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