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 ベッドから起き上がろうとしたトシは、今までに経験したことのない激しい頭痛とめまい、そして込み上げる嘔吐感に襲われた。その堪えきれない気持ちの悪さに再び倒れ込みベッドの住人と化した。そこでトシははたと思った。ここはどこの宿なのだろう、と。自分は昨日宿を…。昨日の出来事を思い出そうとすればするほどに頭の痛みが気になってしょうがない。そんな状況の彼にここがどこなのか、そんなことを考える余裕などありはしなかった。「頭ガンガンするし、胃がむかむかするし、もう少し休んでから考えよう」そう自分に言い訳をしてトシはゆっくりと息を吐いた。 「もう昼だぞ、まだ寝てんのか?」  どこかで聞いたことのある声がトシの耳に届いた。 「起きろー。トキワのとこにクエスト見に行く予定だったろ?」 「あ゛―、やめて、動かさないでください」  ベッドから起き上がろうとしないトシにしびれを切らしたタオがトシを揺さぶって起こそうとする。 「じゃあほら、さっさと起きろ」  ベッドの上から退場したタオにつられて起き上がるも、二度寝する前よりは幾分落ち着いたが、再度頭痛に襲われた。トシが一人ベッドの上で鈍い頭痛に頭を抱え蹲るもタオは素知らぬ顔でがさごそと部屋の中をあさっている。 「ようし、準備できた。いくぞ!」 「ごめんなさい、ちょっと待ってください」  そう言ってタオを待たせるも頭痛がひく気配はない。胸のむかつきも今なおしっかりと残っている。 「お前、大丈夫か? 二日酔いだろうな。昨日あんだけ酔ってたし。ちょっと待ってろ」  俺が持ってたかな? なんて呟きながらタオは部屋から出て行ってしまった。  数分後戻ってきたタオの手には白い錠剤と水の入ったコップが握られていた。タオが部屋を出た時と何ら変わりのない状態のトシにその二つを渡す。 「ちょっと古いから聞くかどうかわからんが、ないよりはましだろ。飲んどけ、二日酔いの薬だ」 「ありがとうございます、いただきます」  タオから受け取った薬を飲む。 「トキワのとこ行けるか?」 「頑張ります」  宣言通り立ち上がるも、非常にゆっくりとした速度で行動を開始した。 「トキワ、まだクエスト残ってるか?」 「遅いから大分減っちゃってるわよ?」
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