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僕の通う中学校には、ひとり無茶苦茶な先輩がいる。
授業には出ず、同じくサボリの生徒と雑談し、しかし不良行為は行わず、ただ校内を徘徊する。
そして、一度悪事を発見すれば、証拠を握り先生に通告する、正義の通報者。
皆はその人をこう呼んだ。
「おっじゃまっしまーっす!!」
『ヒーロー』と。
数学の授業中。 窓から突然飛び込んで来た青ジャージに、クラス全員の視線が集まる。 僕の目の前でその人は長い前髪の間から切れ長の目を光らせ、立ち上がって携帯の画面を至って落ち着いている先生に見せ付けた。
「何やってるんだ、ヒーロ。 危ないだr」
「あっちで3年が1年カツアゲしてたよ。 どうにかしてよ、3学年主任。」
みるみるうちに先生の顔が赤くなる。 羞恥ではなく憤怒のようだ。 行き場のない怒りを溜め込んでいる先生の前に、何とも間抜けな先輩達はドアから飛び込んで来た。
僕ら生徒は思わず身構える。 誰の目からしても、この後は良く分かっていたのだ。 一瞬の間を置いて、僕らの予想通りに、噴火は起こった。
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