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ひとしきりの噴火を終えた先生は、僕らに自習を言い付け、緑ジャージの先輩達を引き摺ってどこかへと去って行った。
僕はハッ、とヒーローを見る。 やはり長い前髪の奥で、やはり切れ長の目が満足気にしていた。 ヒーローはくるりとドアに背を向けると、窓から出て行こうとして――
「お前らは、ああなるなよ。」
そう言ってまた来た道である渡り廊下の屋根を渡ってどこかへ行ってしまった。
今の怒涛の展開に置いていかれた僕ら赤ジャージは、「何だったんだ」だの、「今のヒーロー先輩じゃね」だのと、どよめいていた。 僕はと言えば。
凛とした輝きを放つ目と、しゃんと立った時のフォルム。 風に乗って遊ぶ髪。 美しい、としか言いようの無い瞬間だった。
小学生の時から街中で見慣れていた学校指定のダサいジャージが、あんなに格好良く見えたのは初めてだ。 僕の心はヒーローに釘付けとなったのだ。
「……ヒーロー。」
知りたい。 彼が何者なのか。 ヒーローと呼ばれる所以となった通報行為をなぜしているのか。 何故、何故。
たった半月足らずで部活を辞め、クサっていた僕にとって、尊敬出来る先輩を見つけたこの刺激は新鮮だった。 だから、今も忘れられない。
これが、僕とヒーロー先輩の最初の出逢いだったのだ。
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