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【あの子の父親】
「せーんせっ」
ベシッと背中を叩くと、白髪混じりの頭をガジガジと掻いて苦笑した。
「五月さん、加減をしてください」
「たははっ」
「いや、笑ってないで」
国語教師である先生にどっぷりハマッてしまっている私。
友達からは「老け専かよ!!」と言われるが、そんなわけない。
先生だから好きなのだ。
落ち着いた話し方、静かに笑う声、目尻に皺を描いて微笑むと、もっともっと優しく見える表情。
時折仄かに香る煙草の匂いまでときめかせる。
「せーんせっ」
大好きな先生と身体の関係を持つのに、時間は掛からなかった。
運が良かったのは、卒業後に妊娠が発覚したこと。
卒業と同時に先生を卒業した私は、地元を離れ、透華を生むこととなる。
…私はとっても幸せよ。
とーるせんせい。この子を授けてくれて、本当にありがとう。
気が向いたら、この子と一緒に会いに行くねっ
END
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