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【フィジカルな彼女】
本当に信じらんない、あの男。
ふわふわのマフラーに顔をうずめてカツカツカツとイライラした音を立てながら自宅へ足を進める。
負けた。あんな子供に負けた…!!
大学では一番、神崎に近い女だった私。
唯一名前を覚えてもらったし、自宅の場所を教えてもらったし…
…しかも、今日なんて初めて家に入れてもらえた!!
清潔感のある男だったから、きっと何もない殺風景な部屋なのだろうと思っていたのに…まぁ踏む場所もないぐらいぐっちゃぐちゃで荒れててびっくりしちゃったけど。
しかもそのあとすぐ家を出て行ってしまうからさらにびっくりしちゃったけど。
ピンポーンとインターフォンが鳴った時、出なければよかった。
何も考えず、普通に神崎がカギを忘れたから…って思って出ちゃったけど、ありえないじゃない。
意気揚々とドアを開けると無表情の綺麗な…でも幼さの残る可愛らしい顔立ちの中学生が立っていた。
「………」
「…………神崎さんはいらっしゃりますか?」
透明な声だと思った。
囁くような話し方なのに、すっと耳に入ってっくる、透明な声。
「……さっき出かけた。すぐ帰ってくると思うわ」
少しだけ威圧的に、上から睨み付けて言ったやった。
私のほうが圧倒的に大人だ。でも、女と女の争いに、年齢なんて関係ない。
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