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心音が、やけにうるさく聞こえる。
きっと、扉を完全に開けてしまえば、『ソレ』の正体が分かる。
冷たい空気が肌を撫でる中、夢の中の自分は何を思ったのか、ゆっくりと扉に手を伸ばした。
(やだっ! 開けないでっ)
願いも虚しく、扉は少しずつ、嫌な音を立てながら開かれていく。
(や……やめて! い、いやっ!)
と、その時、またあの這いずり回る音が扉の向こうから聞こえた。
ズズッ…ズズ…ズ…コッ………………………
扉が止まった。
私は、手を伸ばしたまま、動かない。
(………もう、醒めてよ…)
そんなことを思った直後だった。
キャハッ、キャハハハハハハハハハハハハハ――――。
異様な声が様々な方向から響き渡り、私は自然と口を開いていた。
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
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