悪夢

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出張で隣県へ行っていた私は、二日ぶりの我が家と可愛い妹の元に戻ってきた。 お土産は、ひよこの形のおまんじゅうだ。 慣れた手つきで大量のストラップが付いた鍵を取り出すと、ガチャガチャと音を立てながら扉を開く。 「たっだいま~。由紀、お土産買ってきたよー。一緒に食べよー」 玄関口で騒々しく荷物を下ろしながら、大声で愛する妹を呼んだ。 きっと、『お帰り、お姉ちゃん』なんて言いながら抱き着いて……きたりしたことは一度もないが、すぐに『お帰り』くらいは返ってくると思っていたのに、中々返事が来ない。 「由紀ー?」 もう一度呼ぶが、やはり返事はない。 よく耳を済ますと、水が流れるような音が聞こえる。バスルームからだった。 (こんな朝早くにお風呂?) 不審に思いながら荷物を片付けて待っていると、やがて、髪を濡らしてタオルを頭に被せた由紀が出てきた。 「あっ……由香、帰って…たんだ…」 私に気付いた由紀の顔は、暖かいシャワーを浴びたとは思えないほど青ざめていた。 「由紀っ、どうしたの!?」 今にも倒れそうな由紀を見て、私は慌てて駆け寄った。
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