授かり物

2/3
前へ
/109ページ
次へ
 私は週に一度の気晴らしと運動の為、ストレッチをしに市のスポーツセンターに通っていた。  ストレッチに行くことはその同時、子供が中々出来ずに同居する義母に事ある毎に「まだ出来ないの?本当に子供が欲しいと思っているの?」などど言われながら息が詰まるような思いで暮らしていた、唯一の気晴らしだったのだ。  同居をしていると中々外にも出にくく、ストレッチに行くことはとても有り難い大切な時間だった。  私だって赤ちゃんが欲しいと思っていたし、不妊治療をするには抵抗があったけれど、基礎体温を付けたり、自分なりに良いと言うことはしてきていたが、義母には出来ないと言うこと自体が不思議であり、欲しくないのかという判断をしていたようだ…欲しいとは話したし、言いたくは無い事まで説明したけれど、理解はして貰えなかった。余りにも義母に言われる事が辛かったし、私も赤ちゃんは欲しかったので、やっとの思いで不妊治療をする事になった。不妊治療に抵抗もあったし不安もあったのだが、これで出来れば嬉しいし、出来なければ諦めもつくかも…と思ったからでもある。  不妊治療の通院をしながら、いつものようにスポーツセンターに行き準備体操を終え、体を伸ばした時、下腹にピリッと感じる物があった。 (もしかして、赤ちゃん…?)  直ぐにそう思った。 不妊治療をしていたからというのもあるが、その少し前に不思議な夢を見たからだ。  その夢は私が赤ちゃんを抱き、授乳している夢だった。普段、私は夢を見ても訳の分からない夢だったり、朝起きて直ぐ忘れてしまう。だが、その夢はまるで実際にあったことのように生々しく、経験したことのないはずの授乳をしている感覚があったのだ。  朝起きたとき、あまりにリアルな感覚に不思議で仕方がなかったのだが、もしかして神様が私に赤ちゃんを授けて下さるかも…そんな風に感じていた。  
/109ページ

最初のコメントを投稿しよう!

133人が本棚に入れています
本棚に追加