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悲しげな顔が、ぬっと近づく。あまりにも近すぎて、私は思わず後ずさりした。受付会場の入口でも、私が足を踏み入れた途端人垣が割れたのに、このハイエルフは距離を置くどころか更に寄ってくる。
周囲の視線が痛い……
「あの、さ、ミン。外で話そ」
言い終わらないうちに、景色が変わる。一瞬で外に連れ出されてしまった。
「な、頼むよ。サラ……同種族の情報収集なら、俺、全面的に協力するから」
両手を合わせて、片目をつぶってみせるミン。私、彼にそんな話したことあった? そういえば、妖精族は読心能力あったような。きっと睨みつけると口の端から炎が漏れて、私の脳裏に……あの日のことがバッと浮かんで消えた。
慌てて両手で口を押さえ、ミンに背を向ける。あまり関わりたくないのに、どうしてこのエルフはいちいち絡んでくるのだろう。
「実は俺、もうサラマンドラの情報仕入れてたんだ。ゆっくり話す暇がなかったから、というか、サラは用事済むとすぐ仲間を離れてしまうから、ちゃんと話す機会がなくて」
ミンは本当に私のことを考えてくれていたのだろうか。真意は解らない。でも、話は聞きたい。
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