葛藤

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「分かった。幻の魚取り大会、協力する。そのかわり、サラマンドラの話、聞かせて」  策にはめられたような気もするけど……私は、ミンの仲間に加わり、幻の魚取り大会に参加登録することにした。  幻の魚が多数生息すると言われている、世界一の大河――そのほとりは同じ参加者であろう集団でごった返していた。野営と魚を取る場所を決めかねて上流へ……だいぶ人混みも落ち着いて、野営場所を確保した時には、すっかり暗くなっていた。  ミンはうきうきと野営範囲に結界を張って回っているけれど、彼の二人の仲間……二人とも名前が長すぎて未だに覚えられない……は、初めて会った時から私との距離を縮めようとしない。  私が仲間に加わると毎回こんな調子だからもう慣れたけど、今回は仲間でいる期間がかなり長い。そこで私は、大河に出発する時に食料調達・調理係を申し出た。食料を探したり調理したりする間、単独行動できるからだ。  ミンが魔法で野営小屋を設営、ドワーフとノームが魚取りの網を作り始めて、私は様子見がてら食材を取りに河辺へ向かった。河の中からはありふれた魚の気配しか感じない。幻の魚はもっと上流に避難したに違いない。
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