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何故だろう……体が言うことを聞かない。両手でミンの体をつっぱねているつもりが、ぎゅっと抱きすくめられて、炎の衝動――
「ミン、服が焼けてるっ」
「うんうん、脱ぐ手間が省ける」
「何ふざけたこと言ってんの。離して、火傷しちゃうよ」
「俺、もう溶岩の中に飛び込んでも生還できるから」
せめて言葉で抵抗しようとしても、口下手な私が饒舌なミンに敵うはずもなく。火が吹きかかっても笑っている面長な顔。笑みが消えて、ゆっくり近づいてくる。
「そ、そんな強靭な妖精いたら、困る」
「それは世界情勢の建前だろ。なんなら俺、戦場出る時は魔獣国に加担するよ」
「ミ……ん」
視界いっぱいに、ミンの顔。唇に柔らかい感触が触れる。今まで感じたことの無い感覚が、体中を駆け廻って。彼はじわりと唇を浮かせた。
「炎の精みたい。綺麗だ」
耳元で低く囁く声が、強張った体から力を奪っていく。
「サラ、愛してる」
愛してる、なんて……どうかしている。
「俺のこと、嫌い?」
何だろう、このやるせない気持ち。嬉しい、悲しい、切ない……感情が定まらない。ほろりと何かが頬を伝った。私、泣いている?
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