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 うんざりするほどの寝汗と異様なほど敏感になっている身体――じっとりした不快感で、目が覚めた。 「やだ……また、あの夢見ちゃった」  今、大人気のオンラインアプリゲームの世界。ログインしている時間が重なれば、仲間同士チャットしながら楽しめる、優良無料ゲームアプリ――私は登録抽選で当てたレアキャラ、女サラマンドラを自分の分身にしている。  けれども、サラマンドラは、初心者にはとても扱いにくいキャラだった。最初の頃は仲間に火を吹いてしまうなど、トラブルに苦しんだ。ゲームの中の『私』は、現実にあった辛く悲しい思い出を、悉く追体験させてきた……  『口は災いの元』、諺にもあるのに――口下手のくせに何でも包み隠さず話してしまうせいか、友達と思っていた人達にいつの間にか距離を取られたこと。  ルームシェアまでした親友と、一つの口論から絶交してしまったこと。  社会人になって最初の会社では人間関係に耐えられず、でも技術は身に付けてから、と三年勤めて辞表を出して。以後、独りでもこなせる仕事を求め、いろんな職を転々とした……  女サラマンドラは、バーチャルなのに、私そのもの。
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