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 今日も、独り――一日好きなように働いて、ねぐらにしている苔の茂みに帰って来た。ところが……何やら寝床に仕掛けが施されている。巧妙に苔に隠された、見えない魔法の糸。呪縛の魔法陣だった。寝転がってから気がついた、質が悪い。  でも、隠すのに力を入れすぎたのか、陣の効果は蜘蛛の巣並。中途半端に絡み付いてきて、鬱陶しい事この上ない。私はイライラと尻尾で魔法糸を払った。サラマンドラがこんなチャチな魔法罠で動けなくなるとでも? 甘いわ。  とはいえ、私は体の大きさをある程度変える魔法しか使えない。妖精並とまでは言わないけれど、せめて人間が操るくらいの魔法が使えたら……この魔法糸を辿って仕返しできるのに。考えていたら腹が立ってきた。  あまり怒ると寝床を燃やしてしまう、もう寝よう。と、諦めかけたその時。茂みの外れ辺りから、ガチャガチャと不快な金属音が聞こえてきた。私は四~五キロ先の音も聞き分けることができる。いきなりすぐそこから聞こえてきた――ということは。
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