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「本当に掛かったのか?」
「魔法反応あったから、間違いない。すぐ近くだから音を立てずに近づくぞ」
話は筒抜け。きっとこの声の集団……足音からして四人が、私の寝床に魔法罠を仕掛けた連中だろう。ここは寝たふりをして、奴等が至近距離に来るのを待つ。
「いた、あそこ。思ってたよりちっせぇな」
「しぃっ。眠ってるみたい、気配を消して」
苔が潰れないよう体縮めているだけだし。それに全然、気配消えてないし。足音は一応、寝床の後ろに回り込む。唾を呑む音、武器を握り直す音が聞こえた瞬間。私は飛び起きて振り向きざま、勢いよく火を吐き出した。四つの驚愕した顔が、言葉にならない叫びを茂み一帯に響かせながら見る間に焼け爛れていく。
焦げ臭い静寂……結局、寝床を焼いてしまった。熔けた武器や鎧の端からは、燃え残った火がしゅうしゅうと土を赤くしている。お気に入りのねぐらが台無しだ。私は灰になった苔の寝床から下りると、燃え残りの火を踏みつけて消火した。
どういう経緯で罠を仕掛けたのか、聞きそびれた。まあ大方、私の鱗なり舌なりを手に入れようと画策した集団だったのだろう。これだから、迷信を信じる連中は……
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