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闇の魔女
夢から覚めた私は涙をこぼしていた。
「ぁー…はぁー…」
声を出そうと頑張るが、出るのは酷くかすれた音だけ。
足や手も動かない。
あたりはずっと真っ暗。
(夢だよね。)
なにか今日はバカみたいに悔しくて悲しい、とても不幸だ。
(不幸、でも毎日の事、あぁ時間が経つのが遅い。)
(夢の私、いやジェニー、可愛かったな…。あのキレイな瞳…。うらやましいなぁ…。)
いつもに比べると時間が経つのが早かったかも知れない。
あんなはっきりした夢は初めてで、何も無い私には小さな事、一つでも期待してしまうのだ。
だから今夜は、ほんの少し、ほんの少しだけ、期待して寝た。
…
……
………!!
目の前には広大な世界。
一目で分かった。
「夢の中なのに信じられない。またこの世界に来れた。」
「お、おはようお嬢さん。」
肩に乗ったジミニーが私に言った。
この世界に来れて、ジミニーに会えた事がとても嬉しかった。
「ジミニー!!わぁジミニーなのね!!」
「はは、どうしたんですかいきなり。人形でも涙を流すんですね。」
「本当ね、おかしな話ね。」
とりあえず心が踊っていた。わくわくしていた。意味も無く大地を駆け回った。
駆け回った先で、ある家を見つけた。
家といっても、小さな小屋のような家。
そこに向かう、黒い布で全身を隠したおばあさんが、お姫様のような美しい女性にリンゴを渡していた。
「何かの作品で読んだ事のあるシーン…」
私はバレないようにおばあさんを追いかける事にした。
すると、人目のつかない所で、おばあさんは黒い布を脱ぎ捨て、黒いドレスをまとった若い女性になった。
「えっ!?どういう事!?」
思わず声が出てしまった。
黒いドレスの女性は私を見て言った。
「なんだい?ネズミにでも変えられたいのかい?さっさとお帰り。」
「あなた、なんだか悲しい顔をしているわ。何かあったの?」
私が返答するとジミニーが小声で私に言った。
「やめるんだジェニー、彼女は有名な悪い魔法使いだ。」
「悪いと決めつけるのはまだ早いわ。だってこの人、本当に悪い人なら一目で私をネズミにしているもの。分かった!!私、この人を幸福にする!!」
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