序章--報告書。

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伝説--とは、一体何でしょうか。 文献に記された古代文明や歴史、各民族や部族に伝わる伝承、それとも気づかぬ間に広まった根も葉もない噂、でしょうか? その答えを知る者、あるいは答えを求める者。 それらの人物は歴史上最も崇高な栄誉を与えられ、時と場合によれば英雄とまで崇められます。 それもその筈。謎が世界を支配しているこの時代に新たな風を吹き込むのですから。 では、人そのものが伝説となったケースではどうでしょうか。 人種、生まれた場所、成した偉業。当然それらは違います。 伝説となる要因、それはその時代の世界の流れ、環境だと考えます。 個人の誉れ高き偉業もさることながら、常に変動する環境こそが人を伝説にする--と。 さて、今回の事件は間違いなく、近代歴史上最も過酷であり悲惨な出来事でした。 伝説、とされていた神とも呼ばれる存在が復活したのですから。 あと少し、何か状況が違っていたら、この世界は破滅していたかもしれない。 しかし、そうはならなかった。 その渦中に飛び込んだ一人の人物。彼が全てを変えたのです。 私個人の友人でもあるため恐縮ですが、確信しています。 数年後、数十年後。彼、彼等は伝説となる。 伝説を討ち、世界を破滅から救った新たな伝説として。 しかし困ったことに、彼等はそれを望まないのです。不相応だと感じているのか、静かに暮らしたいだけなのか。それは分かりません。 私も彼等の友人としてギルド、及び学術院には見合った対応をしていただきたいと切に願い、今回は筆を置きます。 ところで、支給願いを出した装備一式はまだでしょうか? フラヒヤ山脈は麓といえど眠たくなるほどに寒いのです。早急にお願いします。 王立古生物書士隊--書士官 シャロン・マッケンジー
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