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田中徹、吉田浩二、灰田竹松と言えば、小中と、少しは名を馳せた仲良し三人組だった。いつも三人で登校して、そして下校する。
しかし、それが最近、高校生に上がってからというもの、徹はどこか、疎外感を感じていた。浩二と竹松だけで登下校する日も増えて、三人一緒にいても、蚊帳のそとな気がしてならないのだ。
そして今日、下校するふたりの後をつけ、耳を澄ませて会話を聞くことにした。もしもふたりが、自分を嫌っているなら、それでもいい。自分で新たな友達を作るだけのことだ。
そう強がる徹の顔は、やはりどこか悲しげだった。
まだ陽も落ちようとしない、昼下がり。保護者面談のため、早く家路につく、同じ制服を着た生徒たち。
その変わらぬ姿の中に、笑って話す、浩二と竹松がいる。
昨日の夕飯の話に始まり、かなり飛躍したのか、世界の食料危機について話をしている。
いつも通る帰り道。川沿いに作られたランニングコースに、世界の食料危機について話し合う高校生が、こんなにも身近にいたとは…いや、身近と思っていたのは、実は自分だけだったのではないだろうか。
そう考えると、さらに悲しくなった。溜め息が自然と漏れ、心中、もういいや、と思っていた。その時だった。
ふたりが突然足を止めたのだ。そして浩二が「遊んでこうぜ?早く終わったし」
と竹松に言った。
ああ、なんだ。ふたりで遊ぶのか…
今まで自然と下がっていた頭を上げた。目の前には、ふたりが今から遊ぶ場所が、変わらずに建っていた。
嘘だろ…
「俺ん家?」
次の瞬間、徹はふたりのもとへ駆け出した。
眩しい笑顔を見せて。
完
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