甘い傷

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近所の本屋までは徒歩10分。文具の方が多い、雑然とした店だが俺は好きだ。 新刊が入荷してるのか分からないような店内の配列。それは美しくないが、頼めばちゃんと取り寄せてくれるし留守電に伝言を残してくれる。 ―入荷したよ― 店名を告げていたのは最初だけで、ここ最近はその一言だけ。 やる気のない店員の声はいつも同じで、レジで雑誌を読んでいるのも同じ人物だ。 メガネを押し上げ、レジに近づく。顔を上げた店員、川越龍馬(カワゴエ リョウマ)とはもう何年来の付き合いだろうか。
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