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そんなことを言ったものの自身などかけらもなかった。
それに、まじめに戦うつもりなどない。隙をついて逃げるつもり。
可能か、と問われればYESとはいえない。どちらかといえばできない可能性の方が高い。
かと言って他に手段があるわけでもないわけで。この方法に賭けるほかない。
クロードが槍を振り下ろしてきたため、すかさずよけて竹刀を槍の先端に触れないように強くあてる。
槍が飛んでいくことを狙ったつもりだがおもいのほかクロードの力は強かった。
それでも、クロードの顔が少し歪んだため天と地の力の差があるわけではない。そのことに少し安心する。
「それなりに強いですね。よけられるだけでなく反撃なんて。しかし同じくらいの強さだと思われるのは心外ですね。」
クロードと睨みながら向かい合ったまま告げられた。
心の中で思っていたことだったため、驚いた。見透かされているのか、と。
一発目を避けられるのだと思っていなかったのだろう。表情はないものの声はあきらかに悔しそうだった。
そしてその様子を見ていた水無月が口角を上げているのが視界の端から見えた。
「クロード。加戦してあげましょうかしら?」
はたから見たらクロードに向けて言っているが私を挑発していると思われる表情。
やすやすと挑発に乗る気はない。しかし腹が立たないといえば嘘になる。
「大丈夫ですよ。私一人で。」
クロードは水無月の申し出を断った。
水無月は不思議そうな顔をする。私も同じく。
2人で向かってくると思ったから。
腹の立つ言い方でも助かった、と純粋に思った。2人相手だと逃げる隙もなくなってしまうから。
「水無月は少しの間そこで待っていてください。」
少しの間、か。仕方のないことだが悔しい。
私は目を細めてクロードを見る。・・・さっきまでのクロードとはどこか違う。
本気・・・だろうか?もしかしたら本気ですらないかもしれない。
とにかくすごい威圧感。
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