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「何のようですか?」
立ち止まって少し大きな声をだしてたずねる。
「なぁんだ。ばれてたんですの?」
お嬢様口調なのは2つ結びの少女だった。その子に続いてもう1人の少女もでてくる。
やはり店にいた2人だった。
むしろあれだけ足音をたてておいてばれていないと思っていたのが腹が立った。馬鹿にしているのか、と。あいにく私は耳がいい。
彼女達と向き合う。
「クロード。」
黒髪の子に向けていったから名前なのだろう。
クロードと呼ばれた少女はあいもかわらずポーカーフェイスで、無言のままうなずく。そして片手を自身の前にかざす。
するとクロードの手のまわりの空間が歪み槍が現れた。
これは・・・夢なのだろうか。現実ではありえないようなことが今現在目の前で起きていた。まるでアニメや漫画のよう。
「水無月も戦うのですか?」
初めてクロードの声を聞いたと思う。
2つ結びの子の名前も分かった。水無月というらしい。
「私が手をだすまでもないと思うわよ。」
水無月は口角を上げて目を細め、私を見ながらいった。
いまだに状況が理解できない。しかし先ほどのクロードが言った『戦い』という言葉が気になる。
クロードは「そうですか。」と水無月に同意して、槍の先端を私に向けた。
私は殺されるのだろうか。
1日でこれほだまでに死に直面する人なんてそうそういないだろう。私ってどれだけ運が悪いのか。
「槍の先端を向けて動じないなんて肝が据わっていらっしゃるのね。」
水無月の言葉に心の中で同意する。自分でもよく分からない。きっと肝が据わっているわけではなく実感がないからなのではないかと思う。
信じられないことばかり起こっているから。
「どうして私を殺そうとするの?」
槍を向けられつつも率直に思ったことをたずねる。
2人は少し驚いていたがクロードが答えてくれた。
「後々あなたが敵になることが面倒だからですよ。芽が出る前に抜いてしまわなければ。」
答えてくれたものの何を言っているのかさっぱりだった。
そっけないクロードの回答は必要なことだけを述べているのだろうけど。彼女達とは初対面のはずなのだが。まるで知っているような口ぶりだと思った。
私より・・・もっと。
「さようなら。」
クロードは無表情のままつぶやいて槍を前につきだす。
言葉に危険を察知した私はかろうじてそれをよけることができた。
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