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「意外ですわね。よけられるなんて。」
水無月は少しいらだっているみたいだった。
それは仕方ない。クロードが槍を突き出してきても私は全てよけている。
これでも中学の時はずっと剣道をやっていた。
しかし武器を持っていない私には攻撃する術がない。むしろクロードが本気をだしてしまうと私ではよけられなくなってしまう。
それにそろそろ私も疲れてきた。
「いたっ!」
頬を槍が掠めた。血がでていることが見なくても分かるくらい。そのことに気をとられて転んでしまった。
そして槍がふりあげられる。・・・しかしいつまでたっても槍は落ちてこなかった。
「またか。貴重な体験オメデトウ。」
嫌味じみた言葉が聞こえた。この声はついさっき聞いた声。『またね。』の意味。
彼女はこうなることをわかっていたのだろうか。私が再び、死にそうになるということを。
まさしくリフィアのものだった。彼女は再び私を担いでいた。
「モンスターねぇ。こちとら『契約』されたら困るのですわ。」
モンスター。契約。意味の分からない単語が飛び交う。
水無月の言葉でリフィアは口角を上げた。
そしていきなり私を担いだまま足を踏み込んで飛び跳ねた。
「とりあえず、今はこの子を死なすわけにはいかないんで。さよーなら。」
素敵な捨てセリフをはいてから。
人間とはおもえないようなジャンプ力。いつのまにか彼女達をまいて橋の下に隠れていた。あまりのはやさに唖然。
「さぁ、このへんで1つ。問わせてもらう。・・・生きるか死ぬか。選びなさい。」
その問いかけは全く理解のできないものだった。ただ、リフィアの緊張感のある声から真剣にきいている、ということだけは分かる。
説明してほしい、そう言おうとした時だった。
橋の上から2つ、足音がきこえた。
ヒールの音と普通の靴音。「いましたの?!」という独特な口調と声から水無月のものだとよく分かる。そうなるともう一つは自然とクロードのものということになる。
おもわず息を殺す。さらにリフィアは私の口に手でおさえてきた。
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