プロローグ

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ナルメスの話、それはワートルとルルシアに予想以上の衝撃を与えた。 ケントルムの北東、ベラーレ大陸の北東端とケントルムの真ん中付近に都がある。 この町を含むノックス王国の王都である。 ナルメスはそこで生まれ育ち、また、そこから来たと言った。 王都には当然ながら王宮がある。 故に、王都には王族の情報等が流れる。 それによると、この年の年始めに国王が逝去したという。 これには流石のスッケも驚きを見せる。 ケントルムにはこの話は届いていなかったのだ。 国王が逝去した後、王妃が女王に即位した。 しかし彼女は即位した直後に禁じられた闇の魔法の使用を認め、また自らもそれを扱うようになった。 そのせいなのか王都には凶暴化したモンスター達が出入りするようになり、王都の治安も悪化。 女王はそれをどうする事も無く、それどころかそのモンスター達を王宮の兵として雇うようになった。 1人の学者は、ケントルムの勇者達が世界を救った時と同じ事が起きているのだと言った。 ところが彼はその次の日に処刑されてしまった。 今では前国王の1人娘である王女までもが行方不明。 王都の民達はすっかり怯え、外を出歩く者は少なくなった。 だが、このままでは王都のみならず国もどうなるか分からない。 そこでナルメスは命からがらこの地に助けを求めに来たのだった。 ワートルとルルシアは顔を見合わせる。 昔と同じ出来事だという根拠がある故に反論は出来ない。 だからと言って自分達に何か出来るのかも分からない。 2人とは別に考えを巡らせていたスッケが口を開く。 「ワートル。お前さん、こノ剣を直すことは出来んかノ?」 皆が皆、言葉を失う。 当然の反応にスッケは僅かに意地悪な笑みを浮かべる。 「お前さんでも出来んか。」 ワートルは顔を引きつらせ、首を横に振る。 「待てよ、スッケのジッちゃん。誰も出来ないって言ってない、けど…。」 ルルシアもワートルの言いたい事を理解し、顔をしかめる。 「竜の炎で作ったんでしょ?これ。」 スッケは他の3人の間の空気も読まずにさも楽しそうに笑う。 未だに引きつっているワートルの顔をジッと見つめ、とんでもない事をさらりと言ってのける。 「ならば竜を訪ねれば良い。」
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