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「森に受け入れられた?」
森を進む唯一の手掛かりはスッケに渡された小さな手書きの地図。
道無き道を進みながらワートルはルルシアに尋ねる。
ルルシアは自分の手を引く彼の手を握り返す。
足音と風に揺れる木々の音で聞こえるか聞こえないか、と言う程小さな声で答える。
「………ゴメン。」
いくら幼なじみとは言え、お互いに秘密にしている事はいくらでもある。
彼女が言った言葉の意味もその1つなのだろう。
「お祖母ちゃんに聞いたの。
それ以上は言えない。」
ワートルはその答えで十分だったらしく、振り返って笑って見せる。
それを見てルルシアも安心した様に笑顔を見せる。
何分歩いたのか分からない。
太陽がそれほど移動していない所を見ると、時間もそれほど経過していないのかも知れない。
だが、草木が生い茂った道を歩くのは思った以上に大変で、2人も目的の場所に着く頃には疲れの色が見え始めていた。
地図に書かれた赤いバツ印。
そこは木々が生えず、何かの広場の様に開けた空間がある。
更にその中心には石で出来た美しく頑丈そうな置物がある。
明らかに周りの景色に合わない人工の物。
「あれか?」
ワートルとルルシアが同時に駆け出す。
置物は大きな入れ物で、その蓋は僅かに空いている。
2人は顔を見合わせる。
「去年しっかり閉めなかったのかしら。」
ルルシアの言葉にワートルは首を傾げる。
そんな事を彼が知る訳が無いのだから当たり前の反応である。
ゆっくりとワートルの手が蓋を横に押す。
蓋は見た目ほど重くなく、おそらくはルルシアでも動かせるだろう。
ガタンッと言う音と共に、蓋は傾き地面に落ちる。
同時に何かが、入れ物を覗き込んだワートルに向かってきた。
「あぁーん、人ですのぉ…!」
あまりにも勢い良く向かってきた為、ワートルは尻餅を付き、その痛みで目に涙を浮かべる。
横からそれを見ていたルルシアは口をパクパクさせ、しかし驚きでは無く怒りをその顔に示している。
「モンスターだったらどうしようかと思いましたわぁ。ここに来るまでモンスターに襲われて大変でしたものぉ…。」
入れ物から出てきたのは2人と同い年くらいの、それも見るからに高貴な身分の美しい女性だった。
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