プロローグ

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大変だった、と言うだけあり、女性は白雪の様な肌に血を滲ませ、服もあちこちが引き裂かれている。 それでも彼女が高貴な身分である事は不思議と伝わってくる。 「ぁっ、あの…!」 ともかく離れて貰おうとワートルは意を決し彼女に声をかける。 しかし、彼女は離れるどころか顔をズイッと近づけ、ワートルの顔を品定めでもするように見つめる。 鼻と鼻がくっつきそうなくらいの距離にワートルは赤面する。 更に顔が近付くのに従い、彼女の豊満な胸が彼の胸板に押し付けられる。 ワートルの胸が高鳴る。 「あなた、もしかして…。」 「ちょっとおっ!!!」 ルルシアの声が女性の言葉を遮り響き渡る。 近くのモンスター達が驚いて逃げ出す程の声。 2人はルルシアの顔を見る。 「あんた誰なのよ!さっさとワートルから離れなさぁいっ!!」 今にも掴みかかって来そうな様子を見て女性は慌ててワートルから離れる。 一方のワートルは、それでも落ち着かないルルシアから女性を庇う様に2人の間に立つ。 「何怒ってんだよ、ルルシア。」 鈍感な彼の言葉に怒る気も失せたらしく、ルルシアは盛大なため息をつく。 女性は穏やかに笑い、ワートルの背を押す。 「恋人の方、失礼致しました。 わたくし、ナルメスと言いますのぉ。 お2人はケントルムの方…ですことぉ?」 2人は顔を見合わせる。 ナルメスの自己紹介より、質問より、最初に言われた言葉が強く印象に残る。 「だ、誰がこんな奴の恋人なのよっ。」 そう言い否定するルルシアの顔も、横で頷くワートルの顔も真っ赤に染まっている。 お互いに幼なじみとしか思っていなかった所に恋人等と言う言葉を放たれたのだから当然である。 「そうだよ! って言うかナルメス、さん?あの入れ物の中に剣入って無かったか?」 しどろもどろだが話を逸らそうと、ナルメスが入っていた入れ物を指差す。 彼女は急に元気を失い、残念そうに俯く。 「入ってましたけどぉ…。」 ワートルとルルシアは再び顔を見合わせ、入れ物に歩み寄る。 その中の光景は2人の目を奪う。 2人は同時に大きな叫びを上げた。 「「あぁっ!!!」」
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