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第1部 言葉
「ねぇ‥しゅん」
と暖房のきいた暖かい部屋で、足の爪のネイルを落としながら、瑠奈は俺に話しかけてきた。
「なぁに」
部屋に広がる除光液の嫌な匂いを感じながら返事をした。
「幸せってどんな時に感じる?」
「えっ、いきなりなんすか?」
俺はその質問に驚き、飲みかけの缶ビールを一気に喉に流した。
瑠奈の視線は、足の爪のネイルから俺の方に向けられていた。
(その質問の本当の答えが分かる迄に、
これから起こる辛く苦しい事に、
耐えながら生きて行く事で、
始めて気付くなんて少しも思っていなかった。
その時は。
まるで自分の住んでいる町に、
大きな地震があった時の様に、
予想も出来ない結末が待っていたんだ。)
俺は彼女と暮らし初めて5年目になる。
その当時俺の仕事は水商売。
キャバクラの代表を務めていた。
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