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隣の男が、N.C.に売られて一週間。
イキルの寝床である橋の下…あの男が寝ていた場所には、小さい男の子がいつの間にか寝ていた。
「…おい、お前誰だよ。」
「ん?…あっ、イキル?!」
「そうだけど…誰?なんで、オレの名前知ってんだよ。」
「おれはチヌ!」
「チヌ?聞いた事ねえ。いくつだ?」
「歳?そんなの知らねー。おれは、S.C.の中心に住んでたんだ!!でも、親も兄ちゃんも姉ちゃんも売られちゃって、一人になったから、街の端にあるここ来たんだ!」
「へえ…で、何でオレの名を?」
「おれは、ツゲじいに拾われたんだ!!中心で一人で暮らすよりいいだろうって。」
聞いたものの、ぶっちゃけ興味なんてなかった。
そんな事は、どうでもよかったんだ。
でも、こんなくだらない世界で生きているのに、チヌはキラキラと輝いて見えた。
生きている事が、楽しそうに見えた。
オレには、それが理解出来なかった。
「イキル!聞いてる?!」
「えっ?ああ。」
「とりあえず、おれは今日からここ寝床にするから!!よろしく!」
「…勝手にしろ。別にここは、オレの縄張りって訳でもねえし、許可なしでも勝手にしろ。」
「そうなの?ツゲじいが、あそこはイキルの許可なく寝れんぞって…。」
「…すでに寝てたろ、許可なく。」
「あっ!そっか!!」
この日から、チヌはイキルの後ろを着いて歩くようになった。
イキルが起きればチヌも起き、イキルが走ればチヌも、その後を着いて走った。
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