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カチャリと、冷たい、漆黒の筒が俺の頭に照準を合わせた。
俺の額には赤いドット。正面には軍服に身を包んだ屈強な兵士とアサルトライフル。そして背後には最愛の彼女。
どういうことだ?
隣国との戦時下にある今、全く想像できなかった事ではないが、だからこそ一ヶ月も前から下調べを繰り返して安全な場所を探したというのに。
現実ってやつは甚だ俺の事が嫌いらしい。
俺は彼女を背中の後ろに隠した。
結果は変わらないだろう。単なる自己満足だ。それくらい分かってる。
でも、男、だからな……。
兵士が、トリガーにかけた指に力を込めた。後数ミリでも動けば、弾が発射され、俺の額には風穴が空くだろう。
赤い脳味噌が飛び出るかもしれない。衝撃で骨が砕けてしまうかもしれない。
それでも君は泣いてくらるだろうか。哀しんでくれるのだろうか。
兵士が何か口走った。どうせ「じゃあな」とか、そんな意味だろう。ふざけんな。
そして。
耳をつんざく破裂音。
と、ギンッという金属音。
「は?」
眼前には瞬く間に現れた、蒼く輝く半透明の金属製の…………羽?
こんな緊迫した状況でも俺の男心をくすぐるそれは、俺の額と銃口の間にあたる位置から小さく煙を出している。
助かったらしい。ようやくそこまで思考が追い付いた。
やっとのことでリアルタイムで動き出した思考は、迷う事なく俺を振り向かせた。
彼女は、彼女は無事だろうか。
「な……」
俺は絶句した。
「ごめん。ごめんね……」
再び止まる思考。
黒髪美少女だった彼女の髪は、眼前で弾を弾いてくれた金属よろしく蒼に染まっている。それよりも何よりも、白いミニのワンピースの開‐アイタ‐いた背中から伸びた金属製の二本のアームが目を引いた。
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