彼女

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チラリと兵士の死体を見やる。胸の所で何かが赤く点滅していた。 野郎! 味方呼びやがったのか!? 気が付けば回りを兵士に囲まれている。まったく。笑えない。冗談は顔だけにしろってんだ。 恐怖と現実に打ちひしがれる俺の腕の中で彼女がモゾモゾと動いた。 この絶体絶命の状況の中で彼女は満開の笑顔を咲かせる。 「ありがとう。わたしあんなこと言ってもらえたの初めてだよ。嬉しい。でも……もう少しだけ死神でいようかな」 彼女は一瞬蒼く目を光らせると、華奢な足に力をいれて力強く立ち上がった。 途端にモーター音が大きくなる。 シャッと大きく開いた機械仕掛けの翼。 登った朝日に照らされた彼女の姿は、どこからどう見ても死神などではない。 天使だ。 彼女が一歩踏み出すと同時に連続で鳴り響いた発砲音。発射された弾を蒼い羽が弾く音も同じだけ聞こえる。 俺はそっと目を閉じ、耳を手で塞いだ。そうしてそっと呟く。 ――いってらっしゃい。 その言葉を背に、蒼翼の死神は舞う。 天使のように。
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