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------ 何処行ってたの?
言葉に詰まる。
雅美は更に私の顔を覗き込む。
「速瀬先輩と、いた」
「速瀬先輩?」
その時、会場がざわつき出しているのに気付く。
涼!?
涼が両脇を友達二人に支えられ、左足を引きずりながら歩いているのが見えた。
私達の横を通り過ぎる時に目が合う。
痛みに歪ませた顔で、私に微笑んで見せた。
「しくっちゃった」
一言呟くと管理センター内に入って行った。
「速瀬先輩って?」
雅美が話しを戻す。
何をどう説明したらいいのか、
「速瀬先輩に会ったのは偶然。
でも、
私の事、好きって言ってくれた」
事実だけを伝えた。
雅美の目が丸く見開く。
そしてすぐにその目を細め、笑顔を作って言った。
「そっか、良かったね」
この状況で言って貰えるとは思ってなかった言葉に、今度は私の目が見開いた。
「涼には報告しとかなくちゃね。
あれで結構マジだったと思うよ。
今日もホントに頑張ってたんだぁ」
私はコクリと頷く。
コンコン
私はノックをして、涼がいる医務室のドアを開けた。
「花乃ちゃーん」
私の顔を見るなり、涼の呼び声が室内に響いた。
いつもと変わらない涼が笑顔を振りまいてる。
室内には涼だけった。
「だいじょぅ」
「大丈夫!」
聞くより早く涼が答える。
「まだ聞いてないよ」
「だね」
無邪気に笑う涼。
「でも本当に大丈夫。
ちょっと足 捻っただけ。
佐藤先生が送ってくれるってさ」
------ 報告しとかなくちゃね。
そうだね。
私は頭の中で言葉を選ぶ。
「今日はごめんね」
「どうして謝るの?
ちゃんと見に来てくれたじゃん。」
「だって、」
「謝るなら俺の方だよ。
惚れさすなんて言っときながら、
せっかく作った見せ場をいかせなくて、
結局負けちゃった。」
涼はガクリと肩を下ろす。
「あのね、」
あのね、
私、
速瀬先輩とね、
「ん!? 何!?」
屈託のない涼。
------ 結構マジだったと思うよ。
でも、
でもね、
私が好きなのは、
好きなのはね、
速瀬先輩なんだぁ。
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