恋に恋して

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    それからの速瀬先輩は、私を常に気にかけてくれる様になった。 部活でのランニングも私にペースを合わせ、一緒に走ってくれる事が多くなった。 男女混合のラリー練習も よく私を誘ってくれる。 登下校も一緒になる様に時間を合わせてくれたり、待っていてくれたりする。 付き合ってるんだから当たり前…… なのかもしれないけど。 不満は何も無い…… のかもしれないけど。 その分、涼との距離は広がっていった。 それも当たり前…… なのかもしれないけど。 心の空白は思ったより大きかった。 意外にも涼の存在は大きかった。 『花乃ちゃーん』 時々空耳に振り向く私を、 速瀬先輩が不思議そうに見ていた。 ぎこちなく足を引きずっていた涼も、 一週間程で完全復活し、部活に汗を流している。 ランニング中、そんな涼の姿を 隣を走る速瀬先輩に気付かれない様に 目で追っていた。 何やってんだ私。 憧れの速瀬先輩に優しくされて 調子に乗ってるのかな? それは次第に、周りからも囁かれる様になった。 速瀬先輩と付き合ってる事は、 校内でも徐々に有名になっていたから。 『二年生のくせに生意気』 『調子づいてる』 その度に雅美は、 「嫉妬してるだけだよ。気にするな」 そんな言葉で励ましてくれたけど、 その雅美でさえ顔をしかめる陰口があった。 『柳川先輩、まだ速瀬の事好きらしいよ』 『速瀬もその気みたい』 『名倉花乃はただの当てつけだって』 『あの二人、寄り戻したんじゃない?』 『速瀬の志望高、柳川先輩と同じ高校らしいよ』 柳川先輩は元テニス部の副部長。 今は高校一年生。 つまり速瀬先輩の一つ上になる。 ------ はっきりさせて来る。 いつかの速瀬先輩の言葉が思い出される。 あれは、柳川先輩の事だったのかなぁ? 柳川先輩と速瀬先輩が付き合ってたなんて知らなかったけど、私より二つ上の柳川先輩は、綺麗で上品でしっかりしてて、 同性の私から見ても、大人っぽく魅力的な先輩だった。 早い話しが、私とは大違い。 速瀬先輩は、 本当に私なんかでいいのかな?
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