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日曜日、私は淡いブルーのチュニックに、七分丈のジーンズと黒のキャミを合わせ
身を着飾った。
そしてスカイブルーのミュールを履き、
待ち合わせ場所である高田駅に向かった。
速瀬先輩との初デート。
私の精一杯のオシャレ。
昨日、美容室でセミロングの毛先をすいてもらってもいる。
迷った挙げ句、美容室の帰りに、ドラッグストアで買ったばかりのコーラルピンクの口紅もひいた。
心が落ち着かないのは、
緊張感からなのか、
それとも……
------ 背伸びしてるみたい。
雅美の言葉が頭をよぎる。
でも、分かってる。
今日は自覚してる。
昨日の土曜日、部活に行く途中で私は、
肩を並べて歩く柳川先輩と速瀬先輩を見かけた。
うっすらと化粧をしていた柳川先輩は、
元々綺麗で大人っぽいその容姿を、
更に美しく輝かせていた。
横を歩く速瀬先輩が、時々見とれるかの様に柳川先輩に視線を向けていた。
部活中 柳川先輩の事は、速瀬先輩からも私からも話題にはしなかった。
互いの間で、何も無かった事になっていた。
ただ部活が終わった時、速瀬先輩に呼び止められた。
「明日、待ち合わせしない?
一日、一緒にいよぅ」
朝の速瀬先輩と柳川先輩のツーショットが脳裏に映し出されたけど、私は視線を合わさずにコクリと頷いた。
視線を合わさなかったのは、
きっと今 速瀬先輩の目を見たら
私の中で迷いが生じてしまうから。
『あなたが見ているのは、本当に私ですか?』って。
でも、信じるしかないから。
------ 俺は、本気だよ。
今はそれを、信じるしかないから。
速瀬先輩を信じるしかないから。
家に帰った私は、洋服ダンスから全ての服を引っ張り出し、明日のための服選びをした。
でも、どんな服をあてがっても、鏡の中の私に満足は得られなかった。
私の頭の中では、綺麗で大人っぽい柳川先輩が微笑んでいる。
私は鏡の中の私を睨みつけ、背を向けると、美容室に向かったのだ。
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