恋に恋して

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  [明日の朝、テニスコートで待ってます] そんなメールを昨日送信してテニスコートに向かうと、そこにはすでに速瀬先輩の姿があった。 「ごめんなさい。遅れちゃいました」 ペコリと下げた私の頭を、速瀬先輩が優しく撫でた。 「昨日はごめんね。メール嬉しかった」 速瀬先輩はそれから柳川先輩との事を語り始めた。 「柳川先輩とは、俺が二年になった頃からつき合い出した。 憧れは強かったけど、だんだん無理してる自分に気付いて、何か違うって思い出した。 それを伝えたら、自分が卒業するまで このままでいて欲しいって言われた。 その先どうすかの答えは、卒業式の日に話し合おって。 バレンタインの日、名倉からのチョコレート、本当に嬉しかったけど、柳川先輩との約束があったから、自分の気持ち言えなかった。 でも、俺の想いはホワイトデーに込めた。 アディダスのメーカーは、名倉がそれを好きだったから、俺も好きになったんだよ」 速瀬先輩は私に視線を投げ、再び話しを続けた。 「結局、卒業後に別れたけど、柳川先輩とはそれからもテニスを通しての交流を続けて来た。 それもあって、別れたっていいながら、イマイチ関係が曖昧だった。 はっきりさせたのは、名倉と駅で偶然合ったあの日だよ」 ------ はっきりさせて来る。 あの日、速瀬先輩は確かにそう言っていた。 「俺はテニスが好きだし、これからも続けて行きたいと思ってた。 だからテニスのレベルが高い、柳川先輩が通う志野高を志望してた。 でも、その事で名倉が傷つくなら、俺は志望高を変えてもいいと思ってる」 「えっ!?」 私は驚きを隠せなかった。 速瀬先輩がそこまで私の事を考えてくれているとは思わなかったから。 「最近その話しが柳川先輩の耳に入って、昨日もおとついも説得されてた」 おとついといえば、部活前に見かけたツーショット。 「でも、寄りを戻すとかそういう事じゃなくて、志望高を変える事はテニスを辞める事と同じだって言われただけだよ」 私も同感だった。 テニスを続けるなら絶対に志野高だ。 柳川先輩が気にならないって言ったら嘘になるけど、 私自身、もう無理はしたくない。 だから、速瀬先輩にもして欲しくない。 「速瀬先輩、私は大丈夫」 「えっ?」 「好きだから信じられる 速瀬先輩を好きだから、 だから信じたい。 だから私は、大丈夫」
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