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卒業後も海斗とのメールのやり取りは続いた。
でも海斗は私からのメールに応えるだけで、海斗自らのメールは無くなった。
そろそろ解放してあげたら?……なんて、自分で自分に言ってみるけど、
そんな簡単な事じゃないって、自分が一番分かってるくせに。
人の心がもっと単純だったらいいのになんて思うよ。
複雑過ぎる。
難し過ぎる。
算数みたいに答えが決められてたらいいのにね。
ちょっと考えれば、答えが導かれるものだったらどんなに楽か。
解説書付きだったら、どんなに良かったか。
分かってるのはただ一つ。
海斗が【好き】って事。
今でも【大好き】って事。
答えは出てるのに……
誰か教えてよ。
心から【好き】が無くなる方法。
心さえも無くなる方法。
海斗を忘れられる方法を……
会えば余計に苦しくなるって分かってても会いたくなる。
私の通うテニスクラブや高校には、加賀中出身の男子テニス部員が、元部長の飯塚武をはじめ数人いる。
その関係で練習試合などに後輩を誘う機会が良くあり、海斗も誘われるメンバーの一人だった。
だからテニスを通じて海斗と会う機会は度々あった。
男女混合ペアを組んで試合に臨んだりもした。
意外に息の合ったナイスプレーを繰り返すと、飯塚らに
「お前らアツアツカップルみたいだな」
なんてからかわれたりした。
海斗は雰囲気に合わせて楽しそうに笑っているけど、本心は分からない。
分からないけど、楽しそうに笑う海斗を、やっぱり【好き】だと思ってしまう。
楽しく過ぎるこの時間が、私を過去へとタイムスリップさせ、海斗ともう一度やり直せるんじゃないかと錯覚させる。
しかし現実は、私に夢さえも見させない。
現実へと突き落とす。
「そういや海斗、志野高志望やめるって本気か?」
瞬間、海斗がビクリと私に視線を投げた。
私は何故か聞こえてなかったかの様なそぶりを見せ、その視線をかわしていた。
何故?
------ じゃあ一年後に志野高で。
私は海斗を背に俯き、瞳を閉じてうなだれた。
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