忘れられなくて

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    ------ そろそろ解放してあげたら? 『そうだね』 私は心の中の自分の声に頷いた。 これ以上は海斗まで傷つける事になるから。 「正直に言うね」 私は海斗の目をまっすぐに見た。 海斗を好きになった事、後悔してないよね? だったら、 目をそらしたらダメ。 泣いてもダメ。 海斗を苦しめたらダメ。 「速瀬くんと出逢えて好きになれた事、 ほんの少しの間でも私を好きになって貰えた事、速瀬くんと過ごせた時間…… 本当に嬉しかった。 今はその全てに感謝してるよ」 私は顔を歪ませて笑って見せた。 海斗も口を歪ませた。 「そんな顔しないでよ。 続きが言えなくなるじゃない」 私は顔を引き締め直す。 「今でも……今でも速瀬くんが好き」 海斗の目が見開く。 「だって嫌いになんてなれないもの」 私が軽く微笑んでも、海斗の表情は苦しそうだった。 「これから先も嫌いになんかなれない。 これから先もずっと好き。 忘れるなんて出来ない」 明るく言い切る私を前に、海斗はただ唇をかみ締める。 「でもそれだけ」 「えっ?」 「あースッキリした」 私は両手を組み、グゥーっと背伸びをした。 「何で付き合ってる時には言えなかったんだろうね?」 笑って海斗を見る。 海斗もはにかむ様に笑った。 そして右手を差し出して来た。 私はその手に首を振る。 「今、その手を握ったら離したくなくなる」 海斗がアハっと冗談ぽく笑って手を引っ込めた。 そんな簡単じゃないんだよ。 笑って【さよなら】が出来る程、 軽いものじゃない。 海斗が思っている以上に、 私の【好き】は本気なんだよ。 だけど終わり。 全部終わり。 「やっぱり部活に顔出して来る」 そんな私を、海斗が 「じゃあ」と手を振って見送る。 背中に海斗の気配を感じなくなったところで心の中の声がした。 『よく頑張りました。 もう泣いても良いですよ』
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