忘れられなくて

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    あれから一週間が過ぎた頃、 「柳川ってさぁ、」 部活の休暇中、飯塚がややトーンを下げた口調で話しかけて来た。 「柳川って、海斗と付き合ってるの? もしくは、付き合ってたの?」 現在形と過去形。 いずれにしても、なぜ今頃? 私が返答に躊躇する中、飯塚は話しを続けた。 「先週の土曜日、連絡無しに柳川が部活遅れた日、海斗と会ってたんだって?」 ドキリとした。 私の反応に、更に飯塚は続ける。 「あの日、総合球技場で加賀中サッカー部の練習試合があったらしくてさ、応援の加賀中生が何人も柳川達の事見かけてたらしいよ」 ハッとして思わず目を見開く。 総合球技場は、海斗と会っていた西川駅の次の大高駅からすぐのところにある。 加賀中生なら西川駅を挟んで、高田駅から大高駅を利用するだろうから、見られていても当たり前の状況だろう。 「確かにそんな時期もあったけど、 もう終わった事だよ」 変にごまかすより、あっさり認めてサラリと受け流した方がめんどくさくないだろうと考えてそう言った。 「そっか、なら良かった」 飯塚は下げていたトーンを少し上げた。 「海斗って今、二年の名倉花乃と付き合ってるって聞いてたからさ、二股でもかけてたらヤキ入れてやろうかと思ってた」 「……速瀬くんは、そんな事出来る人じゃないよ」 そんな人だったら、好きになったりしないよ。 「だよな」 飯塚はホッとした表情でアハハと笑った。 海斗は飯塚のお気に入りの後輩だから安心したのだろう。 しかし私は、飯塚とは反対に、胸がキュッと締め付けられた。 ------ 上手く伝わった? ------ どうなのかな? ------ 頼りないなぁ 名倉さんと、上手くいってるみたいだね。
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