忘れられなくて

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    「柳川先輩っ!?」 海斗は私に気づくと驚きの表情を見せた。 土曜日、私は部活に行く途中の海斗を待ち伏せていた。 ------ 柳川の事が関係してるかどうかは分からないけど、海斗、志野高受験迷ってるみたいだぞ。 飯塚が昨日の話しの中で言っていた。 加賀中テニス部顧問の竹田先生から聞いたらしい。 確かめずにはいられなかった。 直接会って、海斗の口から聞きたかった。 ただ逢いたかった訳じゃない。 だけど、 逢えたらやっぱり嬉しい。 なんてね。 もう終わりって決めたばかりなのにね。 そんな後ろめたさを心に引きずりながらも、私は海斗の前に一歩歩み出た。 「おはよう」 「どうしたんですか?」 「取りあえず歩きながら話そ。 部活、遅れちゃうでしょ?」 横に並んで歩き出すと、歩きながら海斗の視線を何度か感じた。 「何?」 私の投げ掛けに、海斗は『アッ』っと慌てた。 「何よ?」 「いやっ、化粧してるの見るの初めてだったから」 中学時代にはしなかった化粧を、今日はうっすらとしてみた。 高校生になってからは、女友達と出掛ける時にはしたりもしてたけど、海斗の前では初めてだった。 「見とれちゃう?」 「からかわないで下さいよ」 私の意地悪な冗談に、海斗が困った様に照れる。 「私だってもう高校生だからね。 これくらいのオシャレはしますよ」 そう言ってクスッと笑う私につられて、海斗も笑った。 気持ちが少しほぐれたところで本題。 「志野高、迷ってるって……本当?」 海斗が答えにくそうに口ごもる。 本当、なんだね。 それってやっぱり、 「私の、せい?」
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