忘れられなくて

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    [一緒に海斗のとこ行こ] 次の日の朝、飯塚からの突然のメールだった。 海斗とは話しをした事を伝えたが、 [メールではラチがあかない。とにかく来い]と言う一方的なメールに、 私は飯塚の元に向かった。 そして無言で海斗の家に向かう飯塚の後ろを、私も無言で小走りについて行った。 すると前方から海斗がやって来た。 「飯塚先輩!?」 海斗は私達の姿をとらえると、驚きの表情を見せた。 その様子から、海斗がやって来たのが偶然だと分かった。 「高校どうするかは決めたのか?」 飯塚がいきなり切り出す。 「それは…」 『考える時間貰えますか?』 そう言っていた昨日の今日で、さすがに海斗は返事に躊躇していた。 「迷ってるくらいなら志野高にしろっ!」 そんな海斗にかなり強引な飯塚だったが、 「もう一度一緒に青春しようぜ。 なんかさ、やっぱお前がいないとつまんねんだよ。 中学時代があまりにも楽し過ぎてさ。」 打って変わった口調に淋しさを漂わせる。 「今決断を誤ると、結果的に、守りたいはずの彼女まで泣かせる事になるぞ」 なんか男同士の会話になっている。 何故この場に私が必要だったのだろう? 私が入り込める余地なんてないのに。 そう思った時、 「柳川の事は心配すんな」 「え?」 何それ…? 思わず飯塚を見てしまう。 が、飯塚はそんな私にはお構いなしに続ける。 「俺に任せろ」 そして言い放つ。 意味が分からない。 海斗も困惑した表情を浮かべている。 三人の沈黙。 しかし、海斗が思いたった様に口を開く。 「俺、行かなきゃ」 「彼女のところか?」 ハッとした。 名倉花乃? 海斗は花乃の元に向かう途中だったのかもしれない。 「飯塚先輩の様にカッコ良くはいかないだろうけど、俺なりに彼女を守りたいから」 海斗と飯塚は、互いに視線を合わせると、意味ありげに微笑んだ。 「じゃっ!」 海斗は視線を私に移すと再び微笑んだ。 「早く行けっ!」 飯塚の追い立てる様な言葉に後押しされてか、海斗はちょこんと頭を下げると走り出した。 残された私と飯塚。 今の状況が飲み込めず、ポカンとしている私に飯塚が言った。 「まだ気付いてねぇの? てか、気付けよな」
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